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私たちを幸福に健康にするのは良い人間関係に尽きる
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私たちを幸福に健康にするのは良い人間関係に尽きる

金沢大学附属病院 小川 真智子

金沢大学附属病院

小川 真智子

日本で数少ない音声外科を専門とする耳鼻咽喉科医である小川先生。音声・嚥下障害の診療や声帯再生研究、声の啓蒙活動など幅広く活動し、将来を期待されている。2人のお子さんの母親でもある小川先生は「両立できているのは夫と両親のおかげです」と語る。子育てと仕事の両立は、医療従事者にとって大きな課題のひとつ。小川先生の歩みは、医療の道へ進む若者にとって非常に参考となるはずだ。


成功体験として、音声外科との出会い、その後の順調なキャリアの歩みをお話いただいた。上司や家族への感謝の言葉からは、周りの人を大切にする小川先生の人柄がうかがえる。

 

キャリアにおける成功体験は、成功と言えるのかはわかりませんが、自分が考えていた以上に、音声外科医として順調なキャリアを歩んでこられたことです。

私が音声外科医を志したきっかけは、大学時代にたまたま観たミュージカルです。部活の引退試合が終わった後に、泊まっていたホテルのすぐそばでオペラ座の怪人が上演されていて、軽い気持ちで観に行きました。学生時代の大半はバスケットボールに明け暮れていて、芸術とは無縁だったのですが、舞台をみて感動したのを覚えています。それからは、コンサートに行ったりミュージカルを観に外国に行ったりするようになり、その度にこれほど美しい音色を人は出せるのかと、心を大きく動かされました。当時は医学生で、声がどのように生成されるかが気になり、発声の仕組みやのどの解剖などを調べては、いつか声を守れる人になりたいと願っていたので、耳鼻咽喉科に音声外科という分野があると知った時は本当に嬉しかったです。

音声外科が扱うのはのど(喉頭)ですが、喉頭領域には、音声・発声障害以外にも嚥下障害を来す疾患、気道狭窄を来す先天性・炎症性疾患、喉頭腫瘍といった幅広い疾患があり、私にはのどに関わる全てが興味深く、学問的にのめり込めました。学生の間に、この仕事をして生きていきたいと思える分野と出会えて良かったなと思います。

研修医の頃には、耳鼻咽喉科医になったら日本最高峰の喉頭医学を学び、声帯研究に携わり、音声・嚥下障害診療の仕事をしたいという夢を持っていました。医師になって約10年になりますが、夢が叶っただけでなく、喉頭科学会優秀論文賞をいただけたり、羊膜を用いた最先端の声帯再生研究を行えたり、声の啓蒙活動ができたりと、思い描いた以上に理想的なキャリアを歩んでこられました。

それも「最先端の喉頭科学を学ぶために留学したい!」「喉頭手術の研修に行きたい!」と次々訴える私をいつも温かく快く送り出してくれた教授や、思いを受け止めて熱血指導をして下さる気さくで理想的な直属の上司、留学先の偉大で教育的で思いやりに溢れた先生方と出会えたお陰です。周りの人に恵まれ、情熱を失うことなくステップアップできたのは、とても幸運なことだと思っています。

また、家族の協力にも、とても感謝しています。夫も医師として働いていて非常に多忙ですが、家事も頑張ってくれますし、話しているだけで楽しくて癒されますし、いつも私を応援し勇気づけてくれます。夫は私にとって精神的な支えで、どんなことでも助けてくれる頼もしい存在です。母もかけがえのない存在です。急患が入った時や手術が延びた時は、いつも母が駆けつけてくれて、子供達のお迎えやお世話をしてくれます。私自身が体調を崩した時や精神的に辛い時にも、何度元気を与えてもらったかわかりません。父も多忙ですが、疲れは一切見せず子供達を非常に可愛がってくれて、いつも最高の笑顔で無償の愛を与えてくれます。皆の支えがなければ、仕事を続けられなかったですし、本当に感謝してもしきれません。

将来的には、音声外科医として、声で困っている方に治療が行き届くように努めたいです。日本の音声外科医は非常に少ないので、声で悩んでいても専門的診察を受けられず無治療のまま苦しんでいる方が多くいらっしゃると思います。音声医学の発展で、従来治せなかった疾患の治療法が開発されたり、音声を温存できる術式が出てきたりしています。声で悩む一人でも多くの方がその恩恵を享受できるように、今は臨床の傍ら、新規技術の導入や喉頭医学研究の立ち上げ、声やのどに関する医学情報が収集できる一般の方向けのホームページ「for voice」の作成等を行っています。

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