ご家族の病気をきっかけに臨床検査技師の仕事に出会った種村理事長。高校卒業後、医療系短期大学に進学し、臨床検査技師として心エコー一筋にキャリアを積んできた。そのかたわら、大学に進み、その後大学院に進学。工学博士号も取得した。さらに、日本超音波検査学会で、編集委員長として長年活躍し、今は理事長として超音波検査のレベルを底上げする活動をしている。「継続は力なり」の座右の銘通り、種村理事長がコツコツと続けてきた努力は、臨床検査の発展に大きく貢献してきた。若者が将来の長いキャリアを考える際に、種村理事長の姿勢は大きな学びとなるだろう。
種村理事長にキャリアにおける一番の成功体験を伺ったところ、日本超音波検査学会の編集委員長として、学会誌を学術誌としての形に整え、学会の地位を高めたことをあげた。学会の仕事を通して、超音波検査の発展に力を注いできた種村理事長。このような努力が、今の医療を支えている。
私のキャリアのなかで一番の成功体験は、学会誌である「超音波検査技術」の学術的価値を高めたことです。
学会では、理事長になる前は学会誌を出す編集委員会に所属していました。編集委員として22年、編集委員長として14年と長い間携わってきました。そのなかで、それまで手作業で論文を郵送してやり取りをしていたものを、すべて電子投稿システムに移行して、オンラインで査読ができるようにしました。内容的にも査読レベルを大幅に上げて、学術誌としてきちんとした形で発行できる体制を整えました。
もちろん大変なこともありましたが、「超音波検査のレベルを底上げしたい」という思いが強かったのです。私は、超音波検査、なかでも心エコー一筋で33年間やってきました。画像診断にはCTとかMRIとかいろいろな検査がありますが、超音波は技師の力量がとても重要になる検査です。
超音波検査は、手でプローブという小さな器具を持って患者さんにあてて、耳に聞こえない音を身体に入射し、臓器から跳ね返ってきた音を利用して画像にする。いわば魚群探知機のような仕組みの検査です。微妙な角度や当て方のコントロールが重要なので、高度な技術や解剖学的知識が必要です。検査中はリアルタイムでエコー画像を見ながら写真や動画を記録したり、臓器や腫瘍の大きさを計測して、検査レポートを作成します。そのためには、病気の知識も必要なんです。
超音波検査はとても需要の増えているジャンルで、私が入会した1987年頃は会員数が500人くらいでした。今では、25,000人くらいもの会員がいます。全ての医療機関で精度の高い超音波検査を提供するには、業界全体のレベルアップが必要不可欠です。教育、標準化、精度管理、といったところを学会が行う必要があり、学術的なところですとかそういったベースを整えることが大切だと考えています。現在は理事長として、「超音波検査室の精度認定制度」の構築に取り組んでいます。
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