歯学部を卒業後、一般診療を経験し、新しいチャレンジとして訪問歯科の道に進んだ宮原理事長。在宅の歯科診療において、東京都でもトップクラスの患者数を診察してきた。2018年には理事長に就任。患者目線の診療と周囲への謙虚な姿勢で、よりよい歯科医療を目指す。宮原理事長のキャリアからは、医療従事者としてのあり方を学べるはずだ。
キャリアにおける成功体験として、訪問歯科との出会いをあげていただいた。訪問歯科に携わることで、一般歯科外来の診療以上に、患者の背景や人生に深く触れる機会ができ、診療への考えが大きく変化したという。その思いを詳しく伺った。
キャリアを振り返って、訪問歯科との出会いは非常に大きかったと思います。上京後は外来の診療をずっとしていて、正直なところ訪問歯科についてはほとんど知りませんでしたし、別ジャンルの歯科医療と捉えていましたね。前職の病院を退職した時に、まだ経験したことのないジャンルに挑戦してみようと思って、安寿歯科に勤務し、初めて訪問診療の世界に飛び込みました。外来でも高齢の患者様を診察する機会は多くありますが、訪問の患者様は歩行が困難だったり、ご病気だったりで、外来診療に来られない人たちです。ライフステージの最後の方を生きておられる方々なので、積み重ねてきた人生の重み、周囲のご家族の思いによりダイレクトに触れられるようになりました。
頭では高齢社会について知ってはいても、独居で困っている高齢者の方々や、介護で苦労されている家族の方々について、初めて実感を持って知ったのです。外来の時に正しいと思っていた治療が本当によい治療だったのかと、振り返る機会が増えました。例えば、なるべく本人の歯を保存するためにブリッジを選択したとします。ご本人が元気なうちは問題なく手入れができるのですが、体調によっては手入れができなくなります。ご家族が手入れをするにしても、難易度は高いです。でも、入れ歯だったら手入れは格段に楽になる。絶対の正解はありませんが、患者様のライフステージに合わせて、将来を見据えて治療法を提案しなければいけないと強く思うようになりました。
院長・理事長をスムーズに継承できたのも、すごくプラスになっていると思います。前の院長先生は大ベテランで今も現役で診療をしていますが「もう院長は引退したい」ということで、引き継がせていただいたんです。クリニックによっては継承がうまくいかないケースが多いと聞いています。ある程度、僕に任せて下さって、スムーズに引き継げたのはすごくよかったですね。もともとある基盤を活かして、さらによい診療を提供できています。
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