金沢大学医学部を卒業後、外科医としてキャリアをスタートしたのちに、日本医科大学付属病院高度救命救急センター研修を機に救急医に。現在は日本医科大学救急医学教授、日本医科大学千葉北総病院副院長として活動。座右の銘である「学は以て已むべからず」の言葉通り、学び続ける松本副院長からの若者へのメッセージには、これからの医師のあり方のヒントが詰まっている。松本副院長のキャリアについて伺った。
師匠にあたる先生の技や考え方を学ぶべく、故郷・金沢から千葉に来て20年。救急医としてのキャリアを着実に積み上げてきた松本副院長。救急医としてのターニングポイントとなった、成功体験はある偶然によるものだった。
僕は千葉に来てから20年になるんですが、一番の成功体験は、師匠にあたる先生が不在のなか、自分たちが司令塔となって、重症の患者さんの救命に成功したことです。今振り返っても、あれがターニングポイントだったなと思います。
当時も今も、僕は怪我をした患者さんの治療や手術をメインとしていて、師匠のもとで技術的なことですとか、考え方の部分ですとか、いろいろなものを学ぶために千葉に来たんです。
患者さんが来るたびに、師匠と一緒に手術をさせていただき、学ばせてもらっていました。手術は任せてもらえることが多かったのですが、ちょっと手が止まるとサポートしてくれるなど手厚く教えていただいたんです。最初の数年は、特に重症の患者さんの場合は、先生の指示のもとで治療を行っていました。
でもあるとき、たまたま先生が不在だったのですが、その場にいるメンバーだけでうまく治療ができた。手術ができたというだけではなく、患者さんを助けていく、救命していくプロセスの戦略をうまく立てることができたんです。
それまではそういった戦略の部分は、いつも先生に指導していただいていたけれど、いなくても成功した。いわば自分たちが司令塔となって治療ができました。自然と毎日の研鑽が積み重なって、ちゃんと身についているという体験を初めてしたのが、その時だったんじゃないでしょうか。ハイレベルな救命だったこともあり、僕をはじめその場にいたスタッフが、明らかに自信をつけた出来事でした。
それから十何年経って、それまで僕の指示で治療に当たっていた後輩が、同じようにたまたま僕がいないときに救命しています。僕は師匠から受け継いだものを、後輩にしっかりと受け継げた。これは、僕個人だけではなく、組織としての成功体験かもしれません。
最近では、「なんか手伝う？」って言うと、「いや、先生、大丈夫ですから」って（笑）。ちょっと寂しくはありますけど、自分が辞めても組織としては大丈夫なんだろうなと思います。
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